2022年12月

VARとは一体何なんだろう?(その6)ー機械の審判は人の仕事だけでなく、人の楽しみも奪うのだろうか?ー

(その1~その5を読んでいない方は、その1から辿ってくださいませ)

私にとって今回のVARに関する検証は、もともと三笘の1mmは精確だったかというよりも、VARで審判の判定の一部を機械が担うことの意義を考えるためのものでした。

意義を考える上で精度は重要なファクターですが、それは科学的な側面だけでなく例えばビジネス上精度がよく聞こえるようにPRされることは非常によくあることで、私はいつもそこを正しく表現しようとしすぎてVCさんに「網盛さん、正直すぎるよ」というアドバイスをいただくほどです・・・


ちょっと脱線しちゃいましたが、今回のW杯のVARは単に「審判を精確にする」以上の問いを投げかけているように思うわけです。




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VARとは一体何なんだろう?(その5)ー機械の審判の精度を評価するなら、人の精度も評価してみようー

(その1~その4を読んでいない方は、その1から辿ってくださいませ)

さて、これまでの三笘の1mmの検証からすると、そもそも精度面で人と比べるのは酷だと直感でもわかると思いますが、そこを有耶無耶にするとまたおかしな議論に発展しそうなので、敢えて人の不完全さにも目を向けましょう。



人間の精度と言ってもスペックシートがあるわけではないので、完璧に定量的な比較をするのは正直難しい点は先に言わせてください・・・でも、センサーの性能以外の面でも十分に検証できる部分もありますので、少しこれまでのおさらいをしておきます。

  1. 線審から直交方向(ゴールラインと平行方向)を1mm精度で観測するには、平行位置から36.3cm以内でなければならない。
  2. 観察範囲は画角で決まる。細かいサイズを判別するには解像度が必要である。
  3. 移動する物体の位置を観測から推測するのには時間分解能が必要である。

という感じですかね。



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VARとは一体何なんだろう?(その4)ー慣性センサーでできること・できないことー

(その1・その2・その3を読んでいない方は、先にその1その2その3をお読みくださいませ)

これまでは実質的にKinexon社ではなくホーク・アイの検証でしたが、いよいよKinexon社の新技術である慣性(IMU:Inertial Motion Unit)センサーについての検証です。

これについては、THE BRIDGEに記事がありました。


ボールの中にはUWBとIMUの両方を利用できる軽量センサーが設置され、ボールの位置とプレイヤーがボールに触れた情報を1秒間に500回も発信し、スタジアム内に設置された同社のローカル ポジショニング システム(LPS)と組み合わせることで、リアルタイムでプレイヤーのキックポイントを正確に検出できるようになっている。


IMUの他にUWB(Ultra Wide Band)も出てきました。このUWBもKinexonのコア技術の一つなのですが、これらがVARの中でどう機能しているのか考察してみます。




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VARとは一体何なんだろう?(その3)ーサンプリングレートってセンサーだとめっちゃ大事なのにまず知らないですよね・・・ー

(その1・その2を読んでいない方は、先にその1その2をお読みくださいませ)

次はカメラの動画に関する検証になります。再びソニーの公式サイトによると

マシュー:ボールトラッキングは2次元画像処理(ボールの中心を見つける)と3次元三角測量(時間の経過に伴うボールの軌道のモデリング)といった大きく2つの要素技術で構成されています。これを8~12台のカメラで、1秒あたり最大340フレームのフレームレート(静止画像数)で実行し、そのデータは判定支援、分析、放送コンテンツ強化などのリアルタイムサービスを提供する中央制御システムに送られます。

とあります。この「1秒あたり最大340フレームのフレームレート(静止画像数)」というのがセンサーのデータ取得ではサンプリングレートと呼ばれるものになります。サンプリングというのは「サンプルを取る」という意味で、つまりデータ1点を取るということですね。


ちなみに皆さんが普段見ている
テレビの映像は30fps(frame per second)です。
実際の機器としてのテレビは動画がぼけないよう
120fpsで表示しているものもあります。
動画ではfpsを使うのが一般的です。



以後、サンプリングレートを1秒間の回数ということでHz(ヘルツ)で表現しますが、この340Hzというのはいわゆる高速カメラと呼ばれるものです。


このサンプリングレートが、三笘の1mmにとってなぜ重要なのでしょうか?



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VARとは一体何なんだろう?(その2)ー4Kのありがたみを思い知ることになるのだろうか?ー

(その1を読んでいない方は、先にその1をお読みくださいませ)

さて、いよいよ独・Kinexon社の技術について少し検証してみたいと思います。Kinexon社はドイツのミュンヘンに本社がある2012年創業の会社で、2022年4月にはBMWなどから130M米ドル、ざっと200億円弱の資金調達をしています。まぁ、W杯で採用されるレベルなんですからそうなんだと思います。


ただ、この会社のコア技術はIoTとAIで無線技術などのため、W杯で採用されているシステムのうち、カメラシステムはもうテニスではすっかりお馴染みになったホーク・アイが採用されているそうです。


このホーク・アイは元々イギリスの会社ですが、2011年にソニーが買収しています。ソニーはテニスラケットに装着する慣性センサーも持っていて(Kinexonと似たような技術ですね)、テニスレッスンもやってるんですよね。


そんなわけでまずはKinexon社のシステムのうち、三笘の1mmのカメラ画像について検証してみたいと思います。


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  • VARとは一体何なんだろう?(その4)ー慣性センサーでできること・できないことー
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  • VARとは一体何なんだろう?(その3)ーサンプリングレートってセンサーだとめっちゃ大事なのにまず知らないですよね・・・ー
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  • VARとは一体何なんだろう?(その2)ー4Kのありがたみを思い知ることになるのだろうか?ー
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Xenoma Inc. 代表取締役CEO/Ph.D.(米・Brown大)/技術の社会への価値還元/モノを作って世の中で活かすまでが私のお仕事♪
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