注: これは普段のぎょーむ日誌とは別です。



映画「複製された男」(原題:Enemy)を観たら、あまりに衝撃的に終わってしまい、



ぽかーん



とするハメに陥りました・・・orz



というわけで、悔しいのでシーンを何度も確認し、ようやく一定の結論に落ち着いたので、記録代わりにブログに投稿しときます。



↓↓↓ 以下、完全にネタバレなので、ご注意ください。







既にいくつものネタバレサイトがあり、

「AdamとAnthony同一人物説」

が主流ですが、いくつかの点から恐らくその解釈が正しいです。 二人が同時に出てくるシーンは、主人格である一方が脳内でもう一方と対峙していると考えられます。


しかしながら、それでもいくつかのシーンで統一的な説明が難しい点があり、いくつかのネタバレサイトでも納得いく説明がなかったので、自分なりに解釈を加えてみたのが以下です。







0. 双子やクローンではない

そう思ってる人はいないと思いますが、「傷跡が同じ」という時点で双子やクローンの可能性はほぼありません。

冒頭の謎のクラブをそういうマッドサイエンティスト系のイベントかなと思ってみていましたが、後にAnthonyのマンションにAdamが忍び込む際、同じマンションの住人に中に入れてもらい、その住人がエレベーターでこのイベントのことについて語っていることからも(冒頭のクラブでAnthonyの後ろにいるのと同一人物)、クラブは怪しげなエロ系のイベントです。



1. AdamとAnthonyが同一人物だとする理由

二重人格だとすると説明はつきますが、同一人物である物証が乏しいです。ところが、一つだけありました。

21分49秒にAdamが役者Anthonyの存在に気づき、自も分が持っている引っ越しの荷物と思しき段ボールから、右側が破れた写真を引っ張り出します。 この写真、1時間12分52秒にAdamがAnthonyの部屋に忍び込んだときに部屋に飾ってあった写真と同じなんですよね。

つまり、もしAdamとAnthonyの部屋が実在していて、写真も実在しているのなら、写真は二人の共有の所有物なので、二人が「双方共に自覚のない同一人物」であるということになります。

傷跡だけでなく、鬚まで同じなのもそのためです。

また、証拠にはなりませんが、45分7秒に「廊下の天井を歩く蜘蛛頭の全裸女性の夢」を見て、まずTシャツを着て寝ていたAdamが目覚めます。最初にオレンジ色っぽいカーテンがある部屋はAdamの部屋です。そして、次のシーンで裸で寝ているAnthonyが同じく目覚めてます。これはベッドサイドのランプの形からAnthonyの部屋とわかります。

二人は同時に存在せず、二人が別々の部屋で同時に同じ夢を見ることはないので、このシーンが同一時刻なのかはわかりませんが、同じ夢を二人が見ているのは確かです。



2. では、その同一人物とは?

解離性同一障害に以下の3つの人格があります。
  • 長時間にわたって体を支配する主人格
  • 複数の別人格状態である交代人格
  • 生まれたときからその人に備わっており社会的にその人の名前を持つ基本人格
この3つの中で、まず基本人格は少々ややこしいのですが、「本名がAdamで、6ヶ月前まで本名をAnthonyとし、芸名Daniel Saint Claireで役者活動をしていたが、妻の妊娠をきっかけに母の強い影響(精神的支配)で歴史の教師になったAdam-Anthony」だと思います。


そして、映画の冒頭から主人格に相当するのはAnthonyです。

いろんなミスリードがありますが、冒頭で母親が新居訪問について電話している新居は、段ボールの積まれたAdamの部屋ではなく、Anthonyの部屋のようです。ラストに近いシーンでAnthonyの部屋のバスルームにいるHelenがAdamに対して「お母様から電話があった」と伝えていますから、母親はAnthonyの部屋の方を新居だと考えていることになりますし、Helenと結婚していることも知っていることになります。

つまり、社会的にはAnthonyの人格で生活しているのがメインの状態ということです。


そうすると、Adamと母親が母親の家らしきところで会っているシーンで、母親が「彼女が誤解する」と言っているのはMaryではなくHelenで、Anthony(Adam)が(Helenが気にしていた)浮気をしたことも知っているようです。

だいたい、こういうときは「彼女」じゃなくて、特に奥さんであればHelenと名前で呼びそうなものですが、そこを彼女とすることでMaryと思わせるミスリードなんでしょう。

このシーンでは、どうも母親は息子のAdamはふざけているか、ちょっと精神的に不安定で、「自分と瓜二つの人間にホテルであった」と主張する息子に対し、心配よりは高圧的に「聞かなかったことにする」というような強い態度を取っています。

母親が「三流役者とそっくりなんて話はよして」と言うシーンがあります。Adamが変な表情を浮かべるので、最初に見たときは「Adamは会ったのは役者だと母親に言ってないのか?」と思い、母親黒幕説も考えましたが、どうも深読みだったみたいです。

母親からすれば「息子が過去のAdamの職業と同じで見た目も同じ人間にあった」なんて話してるのですから、頭がおかしくなったって思ってのことでしょう、半ば強引に話を打ち切ってます。

歴史の教師であるAdamが「支配」について講義するシーンが繰り返し出てきますが、本作品の監督が蜘蛛は母性の象徴と言っていることからも、実の母親による支配によって役者をやめて教師になったことなどから、このような多重人格が生まれたのだろうと推測してます。

母親の賛成しない役者生活をしている彼は本名のAdamを使うことを好まず、Anthonyを名乗っていたのだと思いますが、これも母親の支配との葛藤でしょう。

また、最後に妊娠して母になるHelenが蜘蛛になったのは、Helenの母性の象徴なんでしょう。ちなみに蜘蛛は原作にはないらしいですね。



3. Adamの生活は?

ではAdamとは誰なのか?

Anthonyが主人格ならAdamは交代人格ということになりますが、この場合AdamとAnthonyはお互いを認識しておらず、Anthonyが主人格なのは社会的に主たる生活を過ごしているのと一致しているというだけです。

母親が「Adam」と呼んでいるので本名はどうやらAdamですが、役者時代に彼がAnthonyの名前を使っていたようです。そのことは、Helenだけでなく所属していたボルガ事務所のビルの警備員がAnthonyと呼んでいますし、郵便物もAnthonyであることからわかります。

ですが、学校のウェブサイトにはAdam Bellで掲載されているので、歴史教師としては(戸籍上の本名の)Adamで働いているようです。

Adamの彼女のMaryですが、これはHelenが気にしていたAnthonyの浮気相手とは恐らく別人物で、尚且つ恐らく実在しています。

もともとAdamは交代人格であり、Adamが学校で教えるシーンや部屋でMaryといるシーンにはおかしな繰り返しだったり、曖昧だったりするところがありますので、Adamの部屋も脳内、という可能性もあります。しかし、教師生活は実在する以上、服や車はどこかにないといけないし、Anthonyの部屋で採点などの教師の仕事をしていたとは思えないので、恐らくAdamの生活も実在していたと私は思ってます。。

その中から伺えるのは、Maryが何度かAdamを置いて部屋を出ていくシーンがあることから、AdamとMaryはうまくいってなかったようです。


一点だけわからないのは、主人格であるAnthonyが学校に働きに行く際は、家を出てからAdamの部屋で着替えていることになります。まぁ、Anthonyが「明日学校に行かなきゃなー」と思ったらそのストレスで人格がAdamに入れ替わるため、そこからは生活がAdamになっちゃってるのかもしれません。



4. 多重人格のキャラは?

主人格のAnthonyは、自分が教師をしている間の記憶がない点を除き、恐らく全てを理解しています。そして、浮気心が強く、怪しいクラブに出入りするなど欲望に従って行動するタイプです。

一方Adamは、どこかおどおどしています。もう一人の自分に好奇心を抱きますが、実際会ってみて不安を感じます。支配されてはいますが、母親と頻繁にコンタクトしているのもAdamです。

こういう多重人格ものでは、Adamが主人格、Anthonyが交代人格の方がすっきりするのですが、そこが逆転しているところが非常に話をわかりづらくしています。

AdamとMaryの関係は、Anthonyの欲望に従って行動するものの発露ではないと思いますが、一方で主人格のAnthonyは浮気がばれて怪しいクラブくらいしかはけ口がなかったので、そういう潜在意識がAdamに作用してMaryと付き合っていたのかもしれません。



5. さて、この前提で辻褄は合うのか?

全部合うかはわかりませんが、気になるところを頭からちょっとずつ確認しましょう。


・Adamが最初にAnthony宅に電話したらHelenが出た

これは、最初Helenは完全にAnthonyがふざけていると思ってます。

その後、浮気相手の旦那が電話してきたことを疑います。それはAdamの人格のときにはAnthonyは家に帰っておらず、奥さんは常に浮気を疑っていたからです。

恐らく、Anthonyは「母親の家に行ってた」と言って家を空けていたのだと思います。Adamが忍び込んだAnthonyの部屋にHelenが帰ってきたときに、Anthonyは「母親の家に行くから帰らない」と言っていたようです。その一方で、Helenは母親から電話を受けており、恐らくそう言ってるときにはAnthonyは浮気をしているとHelenは思っていたようです。


・自宅に戻ったAdamがAnthonyに2回電話した

このシーン、実はAnthony宅付近にいたAdamが、何食わぬ顔でAnthony宅に戻ってるんですよね(車をどこに置いたかはご愛敬)。でもって、Anthony宅でAnthonyの脳内でAdamと会話してるのです。

それを、HelenはAnthonyがごまかすためにやったと思っているようです。その電話のときにAnthonyは手書きでメモをしたのでHelenはそれを夜中に探すのですが、そこには本名のAdam Bellと書いてあります。きっと奥さんであるHelenは本名は知ってたと思うので、Anthonyはごまかすために自分の本名をメモしたくらいに思ってるでしょう。


・HelenがこっそりAdam(Anthony)の学校に行く

HelenはAdam Bellのメモを見て気になってウェブサイトを検索し、学校でAdamの名前で活動していると知ります。彼がAnthonyと名乗る理由を知ってたはずなので、たぶん驚いたことでしょう。

それで気になって学校にAnthonyに会いに行きます。そうしたら、Anthonyに完全に「知らないふり」をされたわけです。

そりゃあショックですよね。でもって、その日に家に帰ってきて昼間AdamがHelenに会ったことを全く知らないAnthonyに「知ってるはず」と言って怒り、悲しむわけです。

Helenからすれば当然、でもAdam人格の記憶のないAnthonyには何のこっちゃわからん、というわけですね。


・ホテルでAdamとAnthonyが初めて会うシーン

どちらかの人格がホテルに行ったかはわかりませんが、二人の出会いは完全に脳内での出来事です。


・AnthonyがMaryを尾行

実はAnthonyはAdamの家を知りません。AdamとAnthonyが会ったシーンからも、自宅を教えたとは考えられませんし、ウェブサイトにもそんな情報はないはずです。

恐らくこのシーンは、Adamの家を出たところでAnthony人格に戻り、そこからMaryを尾行したのだと思います。


・ブルーベリー(の謎)

これだけはうまく説明がつかないです・・・が、かと言って矛盾がある、というほどでもありません。

謎ってほどじゃないのですが、母親がAdamブルーベリーを進めるシーンがありますが、Adamは断ります一方、母親に反発するAnthony人格はブルーベリーを好むようです。


・AnthonyがAdamを「妻と寝たのか」と脅す

このシーン、もしかするとこのあたりから主人格であるAnthonyはAdamが自分の交代人格だと気づき始めているかもしれません。Anthonyには教師の記憶がないことを自覚しているはずですし、夜に自宅に帰ってないことも気づいているはずです。

そんなAdamにMaryのような美人の彼女がいることに気づいた、欲望たっぷりのAnthony。当然、奥さんにばれない絶好のチャンスと考え、自分に記憶がない時間に自分の奥さんと寝たと推測し、Adamを脅したんじゃないかと思います。

Adamにしてみればそんな記憶はないので断れたかもしれませんが、もともとAdamは母親の支配から生まれた支配されやすい人格なので、高圧的なAnthonyの要求に断れなかった可能性は十分にあります。

一方、彼自身もAnthonyの、そして自分の存在に疑問を抱き始めており、その疑問が彼をAnthonyの部屋へ向かわせたのだと思います。


・HelenがAdamに「ベッドに来て」といい、「学校は?」と聞く

このシーン、最初映画を観たときは「ばれてる~」と思いましたが、Helenはもともと二人いると思っていないので、そうではないようです。

そもそもHelenはAnthony(Adam)は学校で働いていると思っているのですから、普通の会話なんです。

そして、「母親の家に行くから夜帰らない=浮気」と言ってたはずの夫が、家にいて普段よりおどおどしてます。そりゃあ「浮気相手と何かあったな?」くらいに思いますよね。

そして、「何かいらないか?」と妙に自分に優しい。そして彼の手を自分の妊娠しているお腹の上に置きます。

Adamは悪いことをしているという気持ちで眠れないのですが、奥さんはその夫のおかしな様子から不安や浮気相手から自分のところに戻ってきた希望(?)のような気持ちもあり、そのまま仲良く・・・となるわけです。

恐らく、このあたりで主人格がAdamになったように思います。


・AnthonyとMaryの事故

この時点では実体はAnthonyの家にいるので、その前のAnthonyがAdamの服を来て出かけ、MaryがAnthonyと出会うところから事故までが全て、「自分の彼女であるMaryがAnthonyに騙されてる」というAdamの脳内での出来事です。

ちなみに事故後に車の割れたウィンドウガラスのヒビが蜘蛛の巣のようになってます。母親の支配から生まれた多重人格の死のようなイメージなんでしょうかね。

翌朝、Anthonyの部屋のラジオで「早朝に単独事故があった」とAdamが耳にしていますが、これはもちろん実際のAnthonyとMaryの事故ではなく、偶然の一致もしくはAdamの脳内での出来事です。

恐らく、これをAdamが聞いたことで、Adamの中でAnthonyの死が確定し、人格の統合が為されたことを示していると思います。


・新しい謎のクラブの鍵

人格が統合したAdam-Anthonyですが、謎のクラブの鍵を見て、Helenに「今夜の予定は? 僕は出かけるよ」と伝えます。

当然、そのクラブに行こうと思っています。

人格が統合されたことで、それまでのおどおどした雰囲気が消え、Anthonyが持っていた欲望の部分もAdamの中に備わったということでしょう。


・・・そして、その人格統合Adam-Anthonyが最後に目にするのが、


巨大蜘蛛になった
Helen


です。 



Adamもため息



で、映画はエンディングの全くサスペンス色のない音楽が流れます。


Helenが蜘蛛になったのは、支配者が母親からHelenに移ったのだろうと思います。もともとAdam人格はブルーベリーのシーンでも母親とコミュニケーションは取っていながら、母親には反発する傾向を持っています。


一方、Helenにはあれこれ気を使い、「ベッドに来て」と言われれば行き、 そのままHelenのペースで生活が進んでいます。


Anthonyっぽく「(本当はクラブに行くんだけど)夜、用事があるから」と言ったところで、これから新しく母親になるHelenはもう許さないからね、ってことなんでしょう。







とまぁ、こんな感じに解釈してみましたが、過去にこういう解釈はきっとあったでしょうし、単に自分なりにシーンをまとめて行きついた解釈をブログにまとめといたってだけです。



ぶっちゃけシーンそのものに派手さはなく、冒頭の怪しいクラブのシーンがなければ「何がこの映画の本題なのか?」すら割とずーっとわからないまま進んでいくので、結構好き嫌いの別れる映画だろうと思います。




はぁ、疲れた。

書評とか、絶対無理だな。